性病・性感染症

性感染症(STI・STD)は、性行為によってウイルス、細菌、原虫などが体内に侵入し、性器、泌尿器、肛門、口腔などを介して感染する病気の総称です。感染しても症状が軽いまたは全く現れないことがあり、気付かぬうちに広がることがあります。かつては梅毒や淋病など特定の病気が「性病」とされていましたが、現在では多様な感染症が存在し、これらを広く性感染症と呼びます。
STI=Sexually Transmitted Infections もしくはSTD=Sexually transmitted infection

梅毒

梅毒

梅毒は梅毒トレポネーマ細菌による性感染症で、性行為により粘膜や皮膚の傷から感染します。初期には性器や肛門、口にしこりや全身に発疹が現れますが、症状が一時的に消えるため治癒と誤解されがちです。放置すると脳や心臓に重大な合併症を引き起こす可能性があり、HIV感染リスクも高まります。かつては不治の病とされた梅毒は、現在ペニシリンにより治療可能ですが、進行すると重度の障害を引き起こすため、早期発見と治療が重要です。

クラミジア

クラミジア

クラミジアは日本で最も多い性感染症で、感染者が自覚症状を持たないこともあり、気付かずに感染が広がる場合があります。この病気は性的接触(性交渉、オーラルセックス、アナルセックス)によって感染し、男性では尿道や肛門、女性では膣や肛門、または男女共にのどに影響を及ぼします。感染が進行すると不妊症や母子感染など重大な健康問題を引き起こす可能性があるため、適切な治療が必要です。

咽頭クラミジア

咽頭クラミジアは、クラミジア・トラコマチスという細菌が咽頭に感染する性病で、特に口腔性交を通じて感染することが多いです。多くの場合、感染者は無症状で、のどの痛みや腫れ、発熱、長引く咳、声のかすれ、息苦しさなどの風邪に似た症状が出ることがありますが、これらが出ないために感染に気づかないことも多いです。咽頭クラミジアは最近増加傾向にあり、無自覚のまま他人に感染を広げたり、症状が悪化するリスクもあります。

淋病

淋病(淋菌)

淋病は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる性感染症で、主に性行為により男性の尿道や女性の子宮頚管、肛門、咽頭粘膜などの粘膜に感染します。潜伏期間は2~7日で、男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を引き起こすことが一般的です。特に10~20代の若い世代で感染が拡大しており、男女差は小さいとされています。治療は抗菌薬の点滴もしくは注射となります。

咽頭淋病

咽頭淋病は、オーラルセックスなどにより淋菌が喉の粘膜に感染する性感染症です。生殖器だけでなく、喉にも発症することがあり、多くの場合無症状であるため感染が広がるリスクがあります。咽頭に感染した淋菌は駆除が困難であり、感染した個人は生殖器にも感染していることが一般的です。咽頭淋病は、症状がほとんどなく、風邪と間違えやすい軽微な喉の痛みや違和感にとどまることが多いです。そのため、感染に気付かず放置されがちで、他人への感染拡大の危険性も伴います。

HIV・エイズ

HIV・エイズ

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、人の免疫システムに深刻な影響を及ぼすウイルスで、特に免疫機能に重要なTリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)に感染し、これらの細胞を破壊します。HIVには主に2型存在し、感染すると体内でウイルスが増殖し、感染した細胞が減少するため、普段は体を脅かさない病原体にも感染しやすくなり、様々な疾患を引き起こします。これが進行するとエイズ(後天性免疫不全症候群)と診断され、特定の23の疾患を発症することが一つの基準とされています。HIVの感染源は主に血液、精液、膣分泌液、母乳であり、これらの体液が直接他人の血管や粘膜に触れることで感染が成立します。日常生活で接触する唾液や涙には感染力がありません。感染経路は性的接触、血液感染、母子感染の3つが主で、皮膚に傷がなければ感染しないため、感染予防にはこれらの点に注意が必要です。

性器ヘルペス

性器ヘルペス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)によって引き起こされる性感染症です。感染すると性器やその周辺に水疱性病変や浅い潰瘍が形成され、これらの症状は神経を通じて広がることがあります。一度体内に侵入したヘルペスウイルスは完全には除去できず、免疫力の低下やストレスなどが引き金となって再発します。特に初感染時は症状が激しく、痛みや水泡、高熱などが伴い、後には歩行困難や排尿困難などを引き起こすこともあります。性器ヘルペスは性的接触により感染し、感染部位には男性では主に尿道や肛門、女性では膣周辺や子宮頸管などが含まれます。治療が行われなければ、症状の悪化や感染の拡大が起こり得るため、早期の診断と適切な治療が必要です。この病気は再発率が高く、特に20代後半から60代後半にかけての広い年齢層に見られる特徴があります。

性器カンジダ症

性器カンジダ症

カンジダは、カンジダ属の真菌(カビの一種)によって引き起こされる性感染症で、主に性行為によって感染しますが、自己感染の可能性もあります。この病気は男女ともに性器周辺の皮膚や女性の場合は膣内、男性では尿道に感染し、女性に比べて男性の発症は少ないとされています。感染症は特に女性に多く見られ、主な症状としては膣炎や外陰炎があり、これらの症状はしばしば合併して現れます。発症には通常何らかの原因があり、抗生剤の使用が関連することが多いです。カンジダの潜伏期間は1日から1週間程度で、感染後すぐに症状が現れることもあります。

尖圭コンジローマ・HPV

尖圭コンジローマ・HPV

尖圭コンジローマは、低リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)6型および11型による感染症で、主に性行為によって感染します。この病気は性器や肛門周辺にイボのような乳頭状腫瘍を形成し、感染部位は男女ともに性器や肛門、膣、子宮頸部などに見られます。尖圭コンジローマは、HIV感染のリスクを増加させるとも報告されており、免疫力の低下にもつながります。そのため、異変を感じた際は速やかに泌尿器科や婦人科、皮膚科で診断と治療を受けることが推奨されます。診断後の治療方法には、液体窒素や塗り薬などがあります。感染機会を特定することは困難で、潜伏期間は3週間から8ヶ月と長く、多くの場合、視診で確認が可能です。感染が確認されたら、不妊の原因にもなり得るため、適切な治療を受けることが重要です。

マイコプラズマ

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

マイコプラズマには、性病のマイコプラズマとマイコプラズマ肺炎という二つの異なるタイプがありますが、それぞれの原因菌は異なります。性病のマイコプラズマはマイコプラズマ・ホミニスやマイコプラズマ・ジェニタリウムによって引き起こされ、性行為やキスなどの粘膜接触で感染します。この感染症は性器や咽頭に炎症を引き起こし、症状には尿道や膣のかゆみや痛み、咽頭の違和感がありますが、症状が弱いまたは全く現れないことも多いです。一方、マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ・ニューモニエによって引き起こされ、咳やくしゃみによる飛沫感染で発症します。その主な症状は発熱、倦怠感、頭痛、咳です。両者は感染経路や原因菌が異なるため、性病のマイコプラズマがあるからといってマイコプラズマ肺炎があるわけではなく、逆も同様です。したがって、特定の症状や懸念がある場合には、適切な診断と治療のために医療機関での検査を受けることが推奨されます。

トリコモナス症

トリコモナス症

トリコモナス症は、トリコモナス原虫による性感染症で、男性では尿道や前立腺、女性では腟や子宮頸管が主な感染部位です。この病気は性行為により感染することが多いですが、非性的な経路での感染も可能であり、下着やタオル、浴槽を通じての感染が報告されています。男性は尿道炎や前立腺炎を引き起こすことがあり、排尿時の痛みや頻尿などが症状として現れることがあります。女性では、20~50%が無症候性であり、症状がある場合は、悪臭を伴う泡状の帯下や腟のかゆみ、性交痛などが見られます。トリコモナス症は男女共に影響を及ぼす病気であり、誤解されがちですが、男性にも感染します。世界的には非常に多くの感染者がいる性感染症であり、感染した場合は早期の治療が必要です。

一般細菌

一般細菌

一般細菌検査は、クラミジア、淋病、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、カンジダ、トリコモナス以外の細菌を調べるもので、男性は尿検査、女性は膣検査を行います。この検査により、感染が疑われる細菌の種類や、効果的な薬剤を特定できます。一般細菌は自然環境に広く存在し、性行為を含む接触により感染する可能性があります。感染した細菌によって男性では尿道炎や陰茎包皮炎、女性では膀胱炎や細菌性膣炎などの症状を引き起こすことがあります。しかしながら、全ての細菌感染が性感染症に該当するわけではなく、環境因子や宿主の免疫状態によっても感染が起こるため、症状がない場合もあります。そのため、不安がある場合はパートナーも含めて検査を受けることが推奨されます。

B型肝炎・C型肝炎

B型肝炎・C型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝臓の疾患で、血液や体液を介して、または性的接触によって感染する可能性があります。国内での感染者は110万から140万人とされ、多くは母子間での感染です。輸血による感染は1972年にHBs抗原検査が導入されてから大幅に減少しました。感染は一過性(短期間で治癒)または持続感染(長期にわたる感染)に分類され、持続感染の場合、肝炎が慢性化し肝硬変や肝がんのリスクが高まります。日本では、B型肝炎とC型肝炎ウイルスが肝がんの主な原因で、約75%を占めています。急性B型肝炎の多くは性感染によるものとされていますが、具体的な感染率は未詳です。また、HIV感染者ではHBVとの重複感染が一般的であり、無症候性キャリア化することも多いです。治療を行わずに放置すると劇症肝炎を引き起こす可能性もありますが、早期治療により治癒が可能です。

監修医:とねり腎泌尿器クリニック院長

木村 章嗣

経歴

泌尿器科医/医学博士/日本泌尿器科学会専門医・指導医
ウィーン医科大学泌尿器科リサーチフェロー
東京慈恵会医科大学泌尿器科講師
東京慈恵会医科大学附属柏病院泌尿器科講師診療医長

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とねり腎泌尿器クリニック

住所東京都足立区舎人1-11-17 第3横田ビル2階

診療科目泌尿器科

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